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古代ギリシアの食文化を紹介

古代ギリシアには天才が多い。ソクラテス、プラトン、アリストテレス。
古代の偉人はさまざまな創造力を発揮したけれど、そこには食も関わっているはず。
現代のギリシア料理は無形文化遺産に登録され、魚介類やオリーブ、穀物を使った料理が多く、脳にも良いことが研究でわかっている。
今回は古代ギリシア人はどのような食事をとっていたのか、古代の食文化の背景を見ていく。

古代ギリシアの食習慣

古代ギリシアの食事は朝、昼、夜の一日3食をとっていた。この点で現代と同じ。
富裕層と庶民によって食事に違いはあるが、朝と昼は軽い食事ですませ、夕食に重い食事をとる。
基本的に食事は素手。スープなど必要に応じてスプーンを使い、口に運んだ。
汚れた手は「アミロン」という小麦粉の練り玉で拭き取る。使ったアミロンは床に捨てられ、犬や猫のえさにしていた。

当時のギリシアは男尊女卑が当たり前。
稼ぎ頭の夫が先に食事をとり、そのあと妻と子供が食事をとった。
主に料理は奴隷が作り、主人に運んでいた。

朝食(アクラティマ)

朝食はパンやワイン、オリーブやイチジクといった簡素な食事。
当時のパンは硬く、ワインやオイルにつけて食べやすくしていた。
そこにオリーブの実やいちじく昨日の残り物が添えらる。

昼食(アリストン)

時刻は正午ごろ。朝食と同様に簡素な食事がとられた。

夕食(デイプノン)

一日で最も重要と考えられていた夕食。
労働が終わり、多くの友人を集めて宴会を開いた。食卓には様々な料理が並べられた。
たまごやニンジン、玉ねぎ、キャベツ、旬の野菜、肉・魚料理、パン、チーズやオリーブ。
現在でも貴重なマグロの大トロや、牛肉の煮込み、ステーキなど、これらが多くの皿に並べられ食卓を彩った。
こうした宴会は富裕層の間で行われたため、肉や魚は庶民が食べる機会は少なかった。
この時の食事のスタイルが現在のギリシアでメゼ(数種類の小皿にわけられた前菜)の起源になっていると考えらている。

主な食材

黎明期にはブドウやイチジク、ナッツなどを食べられた。
果物の水分が多過ぎて腹を壊すため、ドライフルーツにしていた。
ギリシアの季節は夏は晴天が続き、冬は雨が多い。
この気候に適応した食物がイチジクやオリーブ、ぶどうであり主要な作物となっている。
穀物はギリシアの気候に適していなかったため、輸入に頼っていた。

紀元前5世紀、穀物の輸入が盛んに行われた。
麦が一般的家庭に普及し、パンや麦粥を食べることができた。
庶民の食事は素朴。パン、豆、オリーブ、ワインが基本の食事で、乾燥野菜や果物・チーズが添えられる程度だった。

ホメロスの『イリアス』や『オデュッセイア』には肉を食べる描写が多いが、肉や赤身の魚は貴重で贅沢品だった。

穀物

穀物の輸入に伴いパンが主食になった。
主食は大麦で作られた「マザ」と呼ばれるかたくて茶色いパン。
マザは庶民から富裕層まで食べられていた。
マザにはヤギのミルクや、塩、ミント、ハーブなどが加えられ様々な味付けがなされた。

小麦で作られたパンは「アルトス」といい見た目は白いパン。
当時、小麦は貴重で庶民は食べられなかった。
しかし祭儀が行われたときはアルトスが提供され、庶民にも振る舞われた。
アルトスもまた味付けがなされ、チーズ入りの「テュリオス・アルトス」も食べていた。

紀元前5世紀ごろにはパン屋が営まれており、同時に製粉屋でもあった。
庶民は家庭でパンは作るのが一般的。しかし富裕層は都市のアゴラ(市場)でパン屋から購入し食卓を賑わせた。

肉・たまご

動物は家畜として飼われていて、食用にはされにくかった。
家畜は牛、羊、ヤギ、鳥などがいた。
牛は畑を耕す労働力、羊は毛を刈り、ヤギは乳搾り、鳥は卵を目的として飼われていた。
肉料理は基本的に富裕層しか食べられなかった。
牛肉は犠牲式で屠殺され参加者に振る舞われていた。
そこへ庶民が参加し、肉を食べていた。
庶民は儀式で生け贄にされた牛肉を食べるのがせいぜいの贅沢だった。

都市では、豚肉を除いて肉は高価だった。主な料理としてはソーセージやスブラキ(串焼き)が一般的な料理。

たまごはウズラやにわとりのたまごが食べらた。パン生地に風味を加えるために使われたほか、ゆでたまごにして前菜やデザートに添えた。

魚介類

地理的にも地中海に面していたため海産物は豊富。

マグロ、カツオ、メカジキ、チョウザメ、スズキやタコ、イカ、エビ、カニ、アサリ、ムール貝など現在でも食べられている。
淡水魚はコイ、カワカマス、ナマズ、のウナギなど。
古代ローマで有名な調味料、ガルムも作られていた。

アテネではイワシやアンチョビは一般的で、穴子やスズキ、マグロは高級品だった。

魚介類の中でもマグロは高級品で、トロの部位が美味とされていた。
日持ちしないため、塩漬けや発酵させるなど加工されていた。

余談として、アリストテレスは動物誌において、魚が声を発するのはオウムベラとコイロス(なまず)だとしている。

野菜・果物

富裕層は新鮮な野菜を食べたが、都市部の庶民は乾燥野菜が中心だった。古代ギリシアの野菜の種類は多く、玉ねぎ、ニンニク、レタス、ネギ、ニンジン、キャベツ、アーティチョーク、グリーンピースなどがある。
野菜はサラダや、豆と一緒にスープにして食べていた。
現在のギリシアでもグリークサラダやファケス(スープ)といった古代から続く料理が現在でも食べられている。

果物はサクランボ、ザクロ、リンゴ、ビワ、梨、オリーブ、ぶどう、無花果、などが食べられた。
そのなかでもオリーブ、ぶどう、無花果、はギリシアには日常に欠かせないものになっている。

オリーブの実は食卓にならび、オイルはパンやサラダに付けていた。
オイルは食用だけではなく、ランプの燃料、薬用、化粧品、など幅広く使われていた。

無花果は「もし家の中に、やまほどの黄金とわずかばかりの無花果と、それから人が二、三人、これだけで閉じこもるとすれば、黄金よりは無花果の方が、いかほどありがたいかを思い知ろう。」(食卓の賢人たち p79 アテナイオス著 柳沼重剛編訳)と言われるほど好まれていた。

ぶどうは基本的にワインにしていた。
古代ギリシアでの一般的な水分補給はワイン。その理由は当時の水は清潔ではなかったため、アルコールによる消毒も兼ねていた。
そのためワインを水で薄めて飲むのが一般的だった。

豆・ナッツ

古代ギリシア人の貴重なたんぱく源。ギリシアの土地でも栽培が安易なため古くから栽培されていた。

種類はレンズ豆、ヒヨコ豆、インゲン豆、エンドウ豆、ソラマメなどが栽培され、栄養価が高い。
豆はスープ、ロースト、デザートに混ぜて食べていた。

アーモンド、くるみ、ヘーゼルナッツ、これらは食後のデザートとし出されていた。
またナッツからオイルを採り、サラダなどに使われた。

乳製品

主にヤギの乳が飲まれ、牛乳が一般的ではなかった。
農村部では飲料として普及していたが、都市部ではパンの風味付けに加えられる程度。
チーズはヤギ、羊の乳から作られた。軟らかいものと硬いものがあり単独で食べることもあった。
チーズはちみつや野菜といっしょに添えられたり、魚料理に使われていた。

チーズで最も古く歴史あるのは、フェタチーズ。
「編籠はチーズが溢れるばかり、檻には仔羊と仔山羊がひしめき合い、それも一番早く生まれたもの、それから後に生まれもの、生まれたてのもの、という風に仕分けて檻に入れてある。そこに置かれてある巧みに作られた容器─あるじが乳を搾るのに用いる樽や鉢はみな、乳漿が溢れている。」
(オデュッセイア 第9歌 228p ホメロス著 松平千空 訳)
このチーズがフェタチーズの原型になってい
つまり紀元前8世紀頃からすでにチーズは食べられていた。

質素な食事をしていた古代ギリシア人

古代ギリシア人はオリーブ、野菜、魚、乳製品を中心に食事をとっていた。
当時、加工食品はなく素材本来の食事をしていた彼らは精神的、肉体的にも健康だったと思う。
とくに魚やオリーブはブレインフードとも呼ばれ、学習能力、記憶力向上に良い作用をもたらす。

質素な食事に栄養バランスがとれ、加工食品を取らない古代ギリシアの生活は人の創造力や知的能力に大きく関わっている。
2000年以上の前の食事は現代の私たちに知的活動のヒントを与えてくれる。

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